教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について

子供の教育資金や生活費について

自分が大学入学に合わせて寮に入り、奨学金無しで仕送りをしてもらって大学を卒業したので、子供にも同じようにしたいと思ってきました。
大学卒業までは奨学金を借りずに仕送りをして、1年くらいの留学費用までは出すつもりでした。
留学期間がそれよりも長ければ、ジュニアNISAや子供の特定口座の資金を使うという事も伝えていました。

残念ながら、子供の学ぶ意欲は低く学力も上がらないまま高2の2学期に入りました。
「高校生になったら部活とバイトを楽しみたい」と言っていた通りにやってきた感じです。
通知表はもちろん、模試の偏差値を見た時はびっくりしましたが、本人が危機感を持ったり気にする様子はありません。
そんなに勉強が嫌いで学びたい事がないなら大学に行かなくてもいいのではないかと早く社会人になって自立する事を勧めていました。
母一人、子一人なので、スムーズな子離れ、親離れをしなくてはと昔から意識はしてきました。
子供が社会人になったらそれ以降の経済的援助はしないつもりでした。

周りがほとんど大学に進学する影響か、夏休みの宿題でオープンキャンパスに行ったせいか、高2の夏休みの終わりに志望校を決めて大学進学の意思を伝えてきました。

65歳の定年まで働くつもりだったので、それまでと同じ収入を維持できれば学費などの心配は不要でした。
病気で退職する事になり収支が大きく変わりました。
お金は出て行く一方です。

予後は厳しく、大学入学までは見届けられません。
ただ、その代わりに自分の老後資金が不要になりました。
今ある資金をどのように使って遺していくかという事をメインに終活を始めました。

成人しても大学を卒業するまではお金の心配はさせたくなかったので、大学卒業までの学費や生活費は十分に確保しておきたいです。

教育資金の一括贈与を利用

平成25年4月から導入された教育資金の一括贈与の非課税措置。
両親や祖父母等から子・孫に教育資金を一括して贈与する場合に,子・孫ごとに 1,500 万円までを非課税(※学校等以外の者に支払われる金額は 500 万円を限度)とする措置で、改悪されていますが現在も利用できます。

資産の多い祖父母が相続税対策として、孫のためにこの制度を活用される事が多いようです。

用途は教育資金に限られ、それ以外に使用した部分は非課税枠の対象外です。
領収書や学校等の書面を提出する必要があったりと手続きも面倒。

元々子供の学費や生活費を親が出すのに税金はかからないので、子供が大学を卒業まで生きられば、親がこの制度を利用する事はないと思います。
末期癌で大学生の子供を扶養する事が難しくなったので、この制度を利用する事にしました。

この制度で最も気になる点は、契約終了前に,贈与者が死亡した場合の取り扱いについてです。
平成31年4月1日以前に取得していれば課税されませんでしが、それ以降の贈与の場合、贈与者死亡日の管理残額が相続税の課税対象になりました。
①平成31年4月1日から令和3年3月31日までの間で,その死亡前3年以内の取得であった場合,
②令和3年4月1日以後の取得であった場合。

これから契約するので、まだほとんど使っていないうちに死亡した場合は意味がないのではと思ってしまいますが、これには例外があります。

受贈者が贈与者の死亡の日において
①23歳未満である場合
②学校等に在学している場合
③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合
のいずれかに該当する場合は,相続税の課税対象とはなりません。

ただし、令和5年4月 1 日以後に取得した信託受益権等に対応する額については,贈与者の相続税の課税価格が5億円を超える場合は①~③に該当しても相続税の課税対象になります。

我が子がこの制度を利用するのは大学卒業まで(浪人せずに行ける大学に進学予定なので23歳までに大学卒業予定)で、相続税の課税価格は1億にも届きません。

以上より、贈与者の死亡日に管理残額がまだほとんど使われていない状態で残っていても、非課税枠のまま大学卒業まで利用できます。

国税庁のパンフレット祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし(令和5年5月)や、文部科学省の教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置に関するQ&A(令和6年4月現在)留学等に関するQ&A(令和6年4月現在)などを参考に今後必要と思われる教育資金について考えてみました。

学校等と学校等以外

この制度を利用する場合、最大1,500万円までが非課税となります。

1,500万円の内訳は、①学校等と②学校等以外の2つです。
①学校等だけなら最大1,500万円(②に使った場合は、①の限度額は1,500万円ー②)
②学校等以外に使う場合は最大500万円まで

高校生の場合、①に該当する費用は、
・在学証明書や卒業(見込み)証明書、成績証明書等の手数料
・入学検定料
・入学金
・授業料
・教育充実費役所関係運営費
・生徒会費
・学校の寮費(学校に対して支払われたのが領収書などにより確認できる場合は①だが、業者に支払う場合は①の対象外となってしまう)

になりそうです。

留学する場合、その国の学校教育制度に位置づけられている大学,大学院なら①の学校等に該当しますが、留学先によっては①に該当しない可能性もあります。

「海外の学校の授業科目を履修してそこで修得した単位について所属する学校等の単位として認定するもの、日本の学校が行っている授業の一部で海外での学習が組み込まれているもの、在籍している学部やコース,専攻において留学が必須なもの」の場合には、「学校等の授業やカリキュラム」の一環として海外で教育を受けるとみなされ、学校等に払った部分は①が使えます(仲介業者を介して支払った分は②)。

現在通っている学校等の一部生徒や希望者が選抜される場合や,希望者のみがホームステイや姉妹校に滞在するプログラムに参加する場合には①ではなく②になってしまいます。



学校等で必要となる費用を業者に直接支払った場合でも,学校等における教育に伴って必要な費用で,学生等の全部又は大部分が支払うべきものと当該学校等が認めたものは,②の学校等以外に該当し、500 万円までが非課税です
・教科書代
・オンライン授業の実施に伴う物品(パソコン・プリンタ等)
・通学定期券代
・留学渡航費
・学校等に入学・転入学・編入学するに当たって必要となる転居に伴う交通費

業者からの領収書等に加えて、学校等からの資料(年度や学期の始めに配付されるプリント、学校便り、教科書購入票、シラバス(講義要項)、学校案内、学校の HP)等、学校等の名称,用途・費目が記載されており,業者を通じての購入や支払を依頼していることが分かる資料も必要です。

ズボラにはハードルが高いですが、領収書や学校からの資料は必ず保管して、大学卒業までの教育関連資金はここから使ってもらいたいです。

金額の目安

①学校等

予備校に入ったばかりで、今後の成績によっては志望校が変わる可能性もありますが、私立大学の文系というのは決まっています。

・入学検定料:3万円~3.5万円/校で、5,6校受けるとしたら20万円くらい。

・入学金:23万円くらい。1校のつもりでいたけど、併願校の入学金の納入期限が志望校の合格発表の日より早い場合は併願校の入学金を先に納める必要があるそうで、入試のスケジュールによっては4校くらいになる可能性もあり、念の為100万円くらい。

・授業料や設備費、学友会費等:私立文系でも140万円/年くらいかかりそう。4年間で560万円。

留学するかどうかも分からず、国や留学期間によっても金額が全然違ってきます。
アメリカの一流大学だと800万円以上かかるようですが、子供が留学する可能性がありそうな大学は、1年でも400万円くらいのようです。

留学しなければ700万円くらい、3ヶ月の短期留学なら800万円くらい、1年間留学する場合は約1,000万円と幅があります。

①学校等に費用で1,000万円いかない場合に②にあてる事はできないので、①の部分を1,000万円と予定していて留学をしなれば、300万円は課税対象になります。

寮に入る場合でも、寮費を学校ではなく業者に支払う場合は①学校等ではなく②の学校等以外の500万円までの枠になります。
寮費は6~9万/月で初期費用や管理料等を加えると、140万円/年くらいみていた方が良さそうです。
4年で560万円。

学費と同じくらいかかります。
留学しなくても、寮生活なら1,000万円を超えます。

寮費が①ではなく②に該当する場合は、寮費だけで限度額の500万円をオーバーしてしまいます。

領収書等の手続きが面倒なので、私が生存中に払える費用の支払いはできるだけ済ませておきたいです。
今の高校を退学したり転校をする可能性は低いので、年4回保護者のりそな銀行口座から引き落とされている高校の学費や設備費は、可能であれば緩和ケア病棟入院前に卒業までの費用を一括で払う事が可能かどうか、高校に相談してみたいと思っています。

②学校等以外

教科書代やパソコン代で25万円くらい。

留学の渡航費用は結構かかりそうですが、行先や時期によっても全然変わってきます。
留学するかどうかも分からない。
夏休み期間に合わせて3ヶ月くらいの留学ができたらいいのではと思っています。
1年なら交換留学で単位が認められて4年でちゃんと大学を卒業できる留学先にして欲しいです。
大学入学後の本人次第で予測不能です。

大学生の通学定期は通勤より大分安くなるので、片道1時間30分の定期代は半年で7万円くらいです。
寮費と比べたら、かなりの節約になります。

駅から大学までバスだともう少しかかりますが、徒歩15分なら全然歩ける距離です(健康な場合)。
電車の乗り換えも1回だけで、1時間半のうち1時間は確実に座れそうなので、自宅通学でもいいんじゃないかという方向に傾いてきました。

オープンキャンパスに行った時に、「乗り換え1回だけで大変じゃなかった」と言っていたのですが、距離や所要時間をみて、私や妹が遠過ぎるのではと寮を勧めましたが、自宅から通える距離ではあります。

寮に入るか、寮に入れず下宿になるのか、自宅から通学するのかによって大きく変わってきます。

せめて大学入学まで見届けられたら、留学を除いた費用の見通しが立ちますが、それは難しいです。

使い切らなくても余裕を持った金額に決定

受贈者のが幼く小中高私立なら余裕で1,500万円を使い切りそうですが、高校生の場合はそこまで使い切れない可能性があります。
使い残した部分は課税されます。

「教育資金契約終了時に非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額がある場合は,当該残額は,贈与税の課税価格に算入されることになります。また,その際,令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に対応する額の暦年課税の贈与税率は,特例税率ではなく,一般税率が適用されます。なお,贈与税の申告手続は,受贈者において行うこととなります」との事なので、使い切る金額を贈与するのが良いのではと、上記の範囲の事を調べて金額を決めようと思いました。

自宅通学するのか、学校の寮に入るのか、下宿をするのかと生活の拠点がどうなるかで大きく変わってきます。
それと、留学。
これが大きいです。

教育資金として使い切れずに余って課税されたら意味がないと、ピッタリの金額を目指そうと思いましたが無理でした。

海外の大学に1年間留学する事になって足りなかったらかわいそうなので、余裕を持って贈与する事にします。

①学校等に1,000万円、②学校等以外に500万円で合わせて限度額の1,500万円に決めました。

大学卒業までに使い切らなかった分は、税金を納めた後の全額を「あしなが育英会」に寄付して欲しいと、遺言状の付言事項に加えようか迷っています。

一括贈与した後の資金は返してもらう事はできないので、余ったお金について意見する事は良くないかもしれません。

1,500万円には、食費や通信費、お小遣いは含まれないので、高校2年生~大学卒業までの5年ちょっとの生活費も別に用意しておく必要があります。

自宅のローンがなくなっても、固定資産税や火災、地震保険はかかるし、水道光熱費、通信費もかかります。
家から大学に通う場合には、住居費が2万円(学生のうちは修繕費2万円の積立なし)、水道光熱費・通信費2.5万円、食費・日用品で4万円、交際費やお小遣いで1.5万円くらいと考えて月10万円くらいの生活費は必要です。
年144万円、5年ちょっとだと800万円近い金額です。

寮でも食事はつかないので、寮費とは別に月8万円くらいの仕送り分は必要そうです。
寮に入れずアパートを借りる場合には、教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置は使えず、家賃や生活費の仕送り分として月16万円くらいの見込み。
年192万円で5年以上だと1,200万円を超えます。

遺産をあてにせず大学卒業後は自立して欲しいと相続する資産を減らす事を考えていましたが、それでは大学卒業まで持たないかもしれません。
学生の間は困らないように、もう少しじっくりと考えてみようと思います。